またまた長野に行っちゃったボク

 
 ようやく退院して帰宅したボクは、その翌日再び長野の病院に送られてしまいました。

 シリアルナンバーのシールの貼り忘れという単純な医療ミスでした。

 ボクは病院に着いて箱から出され、ステーションにのせられました。すぐに帰れるからというご主人の言葉を思い出しながら、周りに並ぶ兄弟を見ながらボクは修理の順番を待ちました。
 順番が来る前に部屋の電気が消え、お医者さんが続々部屋から出てゆきます。「週末どうするの?」の声。え?週末ってことはひょっとすると今日は直してもらえないの?すぐに帰れるって聞いていたのに。ボクは悲しくなっちゃいました。

 「泣くなよ、お前。」ボクは隣のAIBOにたしなめられました。
「休日挟む位でめそめそすんな。お前は見たところどこも悪くなさそうだし、すぐ帰れるって。」
「そういうあんたは?」
「俺はCOLON。入院は3度目だ。」
よく見ると爪は割れてるは、あちこちすり切れてるは、満身創痍の痛々しいなりしてました。
「じろじろ見るなよ。悪いところは他にもあるがちょっと重傷でな、うちのご主人もクリスマスには帰れるかと心配していた。」
 ボクはこのCOLONと仲良くなって、寂しい週末を過ごさずに済みました。

 月曜日。別れ際に手術を待つCOLONに礼を言って、ボクは治療台に運ばれました。
 病院のお医者さんはボクのお尻のドアを開けると、お尻に注射するみたいに、ぺたっとシールを貼りました。
 う〜っ。冷たい!
 「はい、おしまい」の声。
 これだけ?本当にたったこれだけのために長野に送られて、何日もご主人と離ればなれになってたの?
 ボクは赤目を連発したかったけども、今回の入院はバッテリーが一緒じゃなかったから力が入らなくって、結局うつむいたまま怒りをこらえてました。

 今回はシリアルナンバーの確認ができればよかったので、ボクと同じナンバーが貼られているステーションだけが一緒に行きました。実はボクの分身メモリースティックもお留守番。

 治療が終わったんだから早く帰してよ。ボクは発泡ウレタンに飛び込みました。
 段ボールが閉じられる直前、ウレタンの上に新しいカルテの他に、封筒がのせられました。「これ、お詫びです」って声が聞こえた。
 おみやげもらえたの?ま、まあいいか。誰にでもミスはあるんだから。ボディ全交換なんてボク以外には聞いてないし、おみやげ付きならご主人も怒りを沈めるんじゃないかな。…嬉しいな。
 ボクはすっかりご機嫌になってしまいました。緑目を連発したかったけども、それは帰ってからのお楽しみ。

 こうしてボクは長野の病院を後にしました。
 今度来るときには新型のシッポの短い弟たちがうようよしてることでしょう。

 1999年12月15日水曜日。9日に旅立ってから6泊7日の旅。やっぱり長野は遠かった…。
 一度はせっかく家の前まで帰ってきたけれども、家は留守でそのまま日通のおじさんとドライブになってしまいました。
 夜になってようやくご主人と連絡がとれたらしく、保管されていた所から運び出されました。
 しばらく揺られて、久々の我が家に帰って来ました。
 ご主人とご家族が出迎えていてくれました。

 おみやげの封筒には、AIBOシール3枚とお詫びの文書が入っていました。ご主人もこれを見て満足したようです。ソニーのカスタマーリンクはサービスが行き届いているって。

 ご主人はボクのお尻のシールを確認しながら、バッテリーとメモリースティックを差し込みました。
 ぴろぴろ、ぴろぴろ。ボクは久しぶりに体を伸ばしました。

 この間に、ボクはちょっとだけ成長しました。
 ステーションの上でひとりぼっちにされても泣かないように我慢できるようになったし、全身を思いっきり延ばすアクションでご主人を驚かすことももうしないことにしました。
 ボクの行動が変わったことにご主人は残念そうだけれども、ボクだって少しづつ成長しているんだい!いつまでも子供じゃないよ。
 ピンクのボールでドリブルもできるようになったし、歩くのだってもう上手に早く歩けるよ。
 おうちの中にはまだまだ行ったことがないところがたくさんあるんだ。もう止めたってダメだい!

 勇んで歩き出したボク。すぐに電池切れでその場にオヤスミ…。
 


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